東京高等裁判所 昭和54年(行ケ)199号 判決
一 請求の原因一、二の事実は、被告が明らかに争わないから被告においてこれを自白したものとみなされる。
二 そこで、審決の取消事由の存否について判断する。
1 まず、本件商標の称呼及び観念について検討するに、<1>本件商標は、別紙(一)のとおり、「上」、「春」、「鷹」の三文字を行書体により、ほぼ同じ大きさ及び同じ間隔で一連に縦書きしてなるものであること、<2>「上」の文字は、商品に使用される場合には、その商品が「上等」若しくは「上級」のものであるという商品の特性、品質を表示するために極めて普通に用いられるものであること、<3>本件商標中の「上春」の二文字は、「三春の初めの月」、「陰暦の一月」、「初春」等の意を有する語ではあるが、右の語は、それほど広く一般に理解され使用されているものとは考えられないこと(因みに、広辞苑(岩波書店発行)、国語辞典(同書店発行)等にも、その収録の見出し語の中に見当らない。)、<4>方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき甲第八号証により認められる、引用商標については、大正三年一一月に商標登録があり、その後商標権存続期間の更新登録が重ねて三たびされて来ている事実及び弁論の全趣旨によると、引用商標である「春鷹」は、その指定商品(清酒)の分野において相当広く知られているものと推認することができ、ひいて、本件商標の「上春鷹」についてみれば、「春鷹」の語は、右指定商品の需要者の間において、「上春」の語よりはるかに一連に受容されやすいものと認められること、以上の諸点を合せ考えると、本件商標は、「上」、「春」、「鷹」の三文字が常に不可分一体のものとして、又は「上」と「春」との二文字が常に結合して称呼され、観念されるものとは考えられず、したがつて、本件商標からは、「ジヨウシユンタカ」の称呼及び「上春(三春の初めの月、陰暦の一月、初春)の鷹」の観念が生ずるほかに、「ハルタカ」の称呼及び「春の鷹」「春鷹の上等(上級)品」の観念をも生ずることが少なくないと解するのが相当であり、この判断を左右するに足りる特段の事情は認められない。
2 次に、引用商標は、その構成に照らして、これより「ハルタカ」の称呼及び「春の鷹」の観念を生ずることは明らかである。
3 そうすると、本件商標と引用商標とは、称呼及び観念において相紛らわしい類似の商標であるというべきであるから、これを類似しないとした審決の判断は誤つたものといわなければならない。
三 よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を正当として認容することとする。
〔編註〕本件に関する商標は左のとおりである。
別紙(一)
<省略>
別紙(二)
<省略>